ここまで1種類の表面抗原に対して1種類の抗体を結合させて解析することについて説明してきました。しかし、フローサイトメトリーの検査結果には2種類の抗原(たとえばCD4とCD8)の組み合わせのパネルが載っています。これについて少し詳しく触れます。

ここにCD4T細胞、CD8T細胞、B細胞がいるとします。わかりやすくするために、この3種類の細胞だけしかいないことにしましょう。

CD4CD8Bcell.png
ここで抗CD3モノクローナル抗体と抗CD8モノクローナル抗体に登場してもらいます。抗CD3抗体と抗CD8抗体はどちらも蛍光色素で標識されていますが、それぞれ別の種類の蛍光色素がついています。
実際の検査ではFITC(Fluorescein isothiocyanate)という色素とPE(Phycoerythrin)という色素が使われています。このFITCとPEという色素の名前は憶えておきましょう。

CD3CD8mab.png
今回は抗CD3抗体をFITCで、抗CD8抗体をPEで標識しました。
この抗CD3抗体と抗CD8抗体を細胞と混ぜて反応させると、以下のようになります。

CD4CD8Bcellwithmab.png
抗CD3抗体はT細胞であるCD4T細胞、CD8T細胞の両方に結合します。抗CD8抗体はCD8T細胞に結合します。B細胞にはいずれのモノクローナル抗体も結合しません。

CD8multicolor.png
これらの細胞にレーザーをあてて蛍光を検出すると、CD8T細胞はCD3とCD8の両方が陽性なのでFITCとPEの両方の蛍光を発します。CD4T細胞はCD3だけが陽性なのでFITCの蛍光のみを発します。B細胞には蛍光色素がついていないのでどちらの蛍光も発しません。
(ちなみに、FITCの蛍光とPEの蛍光はそれぞれ別々の検出器で検出されます)

結果を図示すると以下のようになります。
CD4CD8Bcellmulticoloranalysis.png
このように2種類以上の蛍光色素を使って細胞を解析することをマルチカラー解析といいます。

まとめ
蛍光色素で標識した複数のモノクローナル抗体を細胞に反応させてマルチカラー解析を行う。