高齢男性。汎血球減少と末梢血中への芽球の出現を認め骨髄検査を施行。

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CD45dim領域(gate1)に15.6%の細胞を認めます。
ゲート内の細胞はほぼすべてがCD33陽性です。CD13、CD34は一部陽性です。
CD13, CD33, CD34は未成熟な正常骨髄系の細胞でも発現します。そのため、ゲート内の細胞が正常な細胞であるか異常な細胞であるかをフローサイトメトリーだけで区別することは難しいと思います。ただ、通常はCD45dim領域に15%もの細胞がいることはないので、骨髄芽球が増加しているんだろうという判断にはなります。

リンパ球領域(gate2)に23.3%の細胞を認めます。
ゲート内において、T細胞 74.8%(CD4 46.1%、CD8 30.3%)、B細胞 4.6%、NK細胞 74.4+19.0-74.8 = 18.6%。この領域に明らかな異常細胞は指摘できません。

骨髄の鏡検では異形成があり、芽球を15.4%認めました。MDS RAEB-2と診断しています。


ここからは蛇足かもしれませんが、実際にフローサイトメトリーの結果を解釈するときに判断に迷う点について触れます。
gate1の中のCD33陽性細胞はGP-Aが弱陽性のようにも見えます・・・が、あえてGP-Aについて言及する必要はないと思います。この症例のように、GP-Aが弱陽性に見えることはよくあります。じゃあこれが赤芽球系の細胞か、あるいはaberrant expressionかというと・・・そこまでは言い難いと思います。
CD7も弱陽性のように見えます。ただ、CD7については非特異な蛍光にも見えるので・・・微妙ですね。これもことさらにCD7陽性と解釈する必要はないと個人的には思います。ただ、このような例で治療経過中や、再発した時に異常細胞のCD7陽性がはっきりしてくることもあります。なので、CD7については弱陽性かもしれないな・・・と思っておいても良いと思います。

なんとなく歯切れが悪い感じになりましたが、フローサイトメトリーでは特定の抗原について陽性とも陰性とも断言しにくいことはよくあります。臨床診断や、フローサイトメトリーの結果で治療方針が変わるかどうか・・・という点もあわせて総合的に判断していくしかないと思います。


フローサイトメトリーの所見
CD45dim領域にCD33+(CD13, CD34は一部陽性)の細胞を全体の約15%認める。