フローサイトメトリーで「造血器腫瘍」と診断するためには、異常な表面抗原を示す細胞を見つける必要があります。そのためには2通りのアプローチの仕方があると考えます。

1つは「クローナリティ」を示す方法。
もう1つは、「通常では存在しない細胞が存在する、もしくは通常は少ない細胞が増加している」ことを示す方法。 

まずはクローナリティを示す方法について。
クローナリティは「クローン性」と言い換えることもできます。
造血器腫瘍に限らず、悪性腫瘍は「無限に増殖する」という性質を持ちます。
多くの場合、その腫瘍は1つ、もしくはごく少数の細胞由来です。
そのため、腫瘍細胞は基本的には同一の性質・表面抗原を持つと考えられます。
1つの細胞からクローン性に増殖していることを示すことができれば、それは正常な細胞ではなく腫瘍細胞であると(ほぼ)示せます。

B細胞性リンパ腫かどうかをκ/λの偏りで判断するのが代表的な例です。
1つのB細胞は軽鎖としてκ(カッパ)鎖・λ(ラムダ)鎖のいずれかしか発現していません。
そのため、クローナルな細胞集団はκ鎖のみ、またはλ鎖のみ発現する細胞集団となります。
もしλ陽性のB細胞が圧倒的に多ければ、それが「クローナリティを持つ細胞集団」であると示すことができます。

例えば、通常のB細胞ではκ鎖を発現している細胞とλ鎖を発現している細胞はほぼ同数か、κ鎖がやや多い程度とされています。
normalBcell.png
例えばこの図の場合だと、κ鎖を発現している細胞が5個、λ鎖を発現している細胞が5個となり、κ/λ比は5/5 =1となります。

abnormalBcell.png
B細胞リンパ腫では腫瘍細胞がクローナルに増殖します。例えば、図のようにλ鎖を発現したリンパ腫細胞が増殖したとしましょう。κ鎖を発現した細胞1個に対し、λ鎖を発現したリンパ腫細胞が9個となり、κ/λ比は1/9 = 0.11となります。

一般的には、κ/λ比は1.5程度を正常とすることが多いと思います(κのほうがやや多いため)。これを大きく逸脱するとき(10:1など)はB細胞性リンパ腫を強く疑います。

B細胞性リンパ腫の他に、多発性骨髄腫も同様の方法で診断できます。


まとめ
B細胞性リンパ腫と多発性骨髄腫はκ/λの偏りでクローナリティを判断する。