フローサイトメトリーの読み方

造血器悪性腫瘍を診断するためのフローサイトメトリーの見方についてのブログです。 血液疾患を診療する医師、および末梢血や骨髄の検査を担当する検査技師向けの内容になります。

2015年07月

Case 008

汎血球減少、末梢血への異常細胞出現とLDH上昇を認め骨髄検査を施行。

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通常のリンパ球よりCD45発現が低い領域gate(1)に39.7%の細胞を認めます。κ/λを見ると、やや発現が弱いですがほとんどの細胞がκ陽性で、クローナルな細胞集団と考えられます。これらの細胞はCD5, CD19, CD20, CD25も陽性、あるいは弱陽性です。CD45の発現はやや弱いですが、成熟B細胞に似た表面抗原です。
以上のことより、CD5陽性のB細胞性リンパ腫と考えます。
CD5陽性のB細胞性リンパ腫としてはCLL、マントル細胞リンパ腫、CD5陽性のDLBCLなどが鑑別に挙がります。フローサイトメトリーの所見から言えるのはここまでだと思います。あとはFISHや病理の所見を待ちましょう。

リンパ球領域(gate2)には14.7%の細胞が存在します。
T細胞 50.6+34.2 = 84.8% (CD4 38.6+9.3 = 47.9%、CD8 34.2%)、B細胞 2.6%、NK細胞 93.8+1.6-84.8 = 10.6%。この領域には明らかな異常細胞は指摘できません。

本例ではFISHでIgH/bcl1融合シグナルを認め、病理診断はマントル細胞リンパ腫でした。

フローサイトメトリーの所見
通常のリンパ球よりCD45がやや弱い領域にCD5dimCD19+CD20+CD25dimκdim(CD10は陰性)の異常細胞集団を認め、CD5陽性のB細胞性リンパ腫と考える。

マルチカラー解析(2)

少しくどくなりますが、マルチカラー解析についてもう一度説明します。

ふたたびCD4T細胞、CD8T細胞、B細胞に登場してもらいます。今回もこの3種類の細胞だけしかいないことにしましょう。
CD4CD8Bcell.png

今回は抗CD20抗体と抗CD5抗体を使ってみます。抗CD20抗体はFITCで、抗CD5抗体はPEで標識されているとします。この抗CD20抗体と抗CD5抗体を細胞と混ぜて反応させると、以下のようになります。
CD4CD8BcellCD5CD20.png
レーザーをあてて蛍光を検出すると、CD8T細胞はCD5が陽性なのでPEの蛍光を発します。CD4T細胞も同様にPEの蛍光のみを発します。B細胞はCD20が陽性なのでFITCの蛍光を発します。
結果を図示すると以下のようになります。
CD5CD20analysis.png
CD5陽性細胞のところにはCD4T細胞とCD8T細胞が存在します。CD20陽性細胞のところにはB細胞が存在します。

前の記事(抗CD3抗体+抗CD8抗体での反応)とは違う図になりました。このように、抗体の組み合わせを変えることによって、同一の細胞集団のいろいろな表面抗原発現を解析することができます。

実際の検査ではCD4とCD25, CD7とCD30, κとλ・・・などなど、様々なモノクローナル抗体の組み合わせで同様のことを行います。これらの結果が、見慣れたこの図↓になるわけです。
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まとめ
実際の検査では様々なモノクローナル抗体の組み合わせを使って細胞の表面抗原を解析している。
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